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メドックマラソン体験記(2)
メドックマラソンの一番の特徴といえば、やはりワイン。コース上の数多くのシャトーで、給水場ならぬ「給ワイン場」が設けられていて、ランナーはマラソンを通じてメドックのワインを味わいつくしながら走ることになる。行政管理の厳しい日本じゃちょっと信じられないことだが、これが世界中からワインファンを集める理由の一つだ。ちなみにこの25年間一人も死者を出していないのが主催者の自慢だそうだ。

もう一つの大きな特徴は、仮装だろう。参加者は仮装を半ば義務付けられており、みんな思い思いの奇抜なコスチュームで42.195キロを走り抜く。朝、スタート地点に向けて仲間と歩いていると、あちこちから異様な格好をした集団が雄たけびをあげながら歩いてくる。我々もウオートンのお祭りハッピを来て臨んだが、顔を豹にかませている髭のオジサンや、ウェディングドレスで完走を目指すお姉さんの気合には全くかなわない。でもみんなとにかく楽しそうだ。

空から音楽が聞こえるので見上げると、スタート地点の上空数十メートルに超巨大クレーンからつりさげられる形でドラム隊が演奏を開始。まるでサーカスのような演出でカウントダウンを盛り上げる。さあ、いよいよだ。そして合図とともに約一万人のコスプレ集団の濁流が狭いメドックの中心街を怒涛のごとく流れ始めた。

400-2.jpg

一杯目のワインは、10キロ地点のChateau Graud Larose。味なんかわからないと思っていたが、のどが渇いているせいかとてもおいしく感じる。15キロ地点で、ワイン畑の先に美しい竹林が出現。「あ、なんか和風な感じ」、と思ったらやはりそこはChateau Lagrange。日本のSuntoryが退廃した名門Lagrangeを買収して欧米以外の企業として初めてメドックに進出したのが1983年。以来26年間、様々な苦労と失敗を重ねながら最近は3級シャトーの名に恥じない素晴らしいワインを世に送り出すところまで見事に復活させた。失敗を恐れることなく、しかし成功におごることもない。さりげなく和風テイストを庭園ににじませながらも、しっかりワインの本場に溶け込んでいるLagrangeのたたずまいに、謙虚なサムライ魂を見た。

26キロの小高い丘の上に待っているのはChateau Lafite-Rothchild。五大シャトーの意地か、ここではきちんとグラスでワインを飲ませてくれた。ワインももちろんおいしいのだが、そろそろ疲れがたまってきているせいか、補給ポイントで出されるアプリコットや冷えたオレンジの切り身もとてもリフレッシングで嬉しい。ふと横を見ると、ラフィットの中庭の池に飛び込んで泳いじゃっている陽気なオジサン軍団を発見。なんでもありのようだ。

ラフィットを過ぎたあたりから市内をはずれ、ひたすら広大なワイン畑の丘を走る道が続く。道端になっているカベルネ・ソーヴィニヨンの身を少し口に含んでみると、とても甘いのに驚く。なんでも今年は暑い日が続いたので、糖分がしっかり凝縮されていてこのままいけばすごくよいビンテージになるとのこと。ちなみにこうしてぶどうを味見するときは、小さな種まで一緒に食べるとその年のワインの味がなんとなくわかるそうだ。

なんとか、苦労しながら37キロ地点まで辿りつくと、道端のワゴンでシェフの集団が大きなナイフで生ハムを切りわけている。ついにここからメドック名物の「フルコース」でラストスパートだ。前菜の厚切りの生ハムを口にほおばりながら一キロ進むと、次は生ガキと白ワインが配られる。39キロ地点では、炭火焼のステーキをほおばる(ただ、ランナーたちが焼きをせかすあまり超レアだったが)。40キロ地点では口直しのフルーツが出て、41キロではデザートのアイスクリーム。一つ一つの料理が楽しみで、一番つらいはずのラスト5キロもなんとか楽しく進めてしまう。42キロ地点ではピエロの格好をしたオジサンが「もうすぐゴールですよ。お化粧直しはばっちりですか?」と書いた大きな姿見鏡を持って一人一人のランナーに声をかけていたのには笑った。

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最後、沿道の大歓声を受けながら、一歩一歩感動をかみしめるようにゴール。タイム的には平凡だが、ほとんどすべてのワインを飲み、景色を満喫しながら完走できた。完走賞の大きなメダルとボトルワイン、そしてMarathon du Medocと刻印された大きなデキャンタをみんな大事そうに抱えて完走の喜びを分かち合っていた。
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【2009/09/12 16:29】 | 未分類 | トラックバック(0) | コメント(1) | page top↑
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