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破鐘ヲ仰ギテ
『東海散士、
一日費府(フィラデルフィア)ノ独立閣(インディベンデントホール)ニ登リ、
仰ギテ自由ノ破鐘ヲ観、俯テ独立ノ遺文ヲ読ミ、
当時米人ノ義旗ヲ奉テ英王ノ虐政ヲ除キ、
卒ニ能ク独立自主ノ民タルノ高風ヲ追壊シ、
俯仰感慨に堪ヘズ、愾然トシテ窓ニ寄テ眺臨ス。
會に姫アリ。
階ヲ繞テ登リ来ル。』


壮大なスケールとロマンを感じさせる書き出し。1885年に刊行された明治のベストセラー小説『佳人ノ奇遇」はここから始まる。会津の遺臣である主人公の東海散士(とうかいさんし)は、西欧各国の美女達と複雑に絡み合いながら、世界を舞台に破天荒な政治的冒険に旅立っていくのだ。

作者の柴四朗氏は、元会津藩士。少年期に戊辰戦争に従軍し、敗戦で一家のほとんどが自刃してしまった。しかし彼はめげることなく、維新後は東京で苦学して英語とフランス語を身につけ、ついに三菱財閥の岩崎弥太郎の援助でアメリカに留学させてもらうこととなった。

そして1885年、柴氏は世界初めてのビジネススクールとして誕生したばかりのWhartonを卒業する。栄えある第1期卒業生5人の一人として。そう、世界で初めてのビジネススクール留学生は、実は、日本のサムライだったのだ。

帰国後、柴氏は熱海で病気の養生をしながら、自らの留学中に綴った10数冊に及ぶ手書きのノートをもとに、「佳人之奇遇」を13年間に渡り書き下ろしていく。自分の目と耳で感じた帝国主義の脅威、すなわち世界各国の植民地化を進める西洋列強の生々しい権力闘争の実態を、日本への強い警鐘として伝えることを自らの使命と考えていたに違いない。小説の手書きの一文字一文字からは、その憂国の思いの深さがもの凄くリアルに伝わってくる。

時代も技術も進歩した今日。僕らが書いているblogなどは、その重みや希少性などどれをとっても当時とは比べ物にならない。でも、100年以上前の大先輩も同じように悩み、悶えていたかと思うと、心地よい連帯感を感じる。もっとずっと苦労しながら、同じ自由の鐘を眺め、日本の将来のことを真剣に心配していた先人の姿が目に浮かぶ。僕らも、もっと頑張れるはずだ。もっともっとやれることがあるはずだ。

Whartonでの時間もいよいよラストの半年。柴氏が卒業したのは、今の僕と同じ33歳。東海散士のように世界中の美女を救うことはできなくても、自分がこの2年間で考え、触れ、感じたことを必ず日本の社会に還元しよう。

見えてきた道筋の、答えをしっかり出す。
これを今年の抱負とします。

皆さま、本年もどうぞ、よろしくお願い致します。

佳人の奇遇

【独立閣遠眺の図(「佳人之奇遇」第一巻より)】
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【2010/01/03 16:10】 | 未分類 | トラックバック(0) | コメント(0) | page top↑
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